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大東亜戦争の敗因を分析すれば、企業経営にも各種試験などにも活用できる [旅で読んだ本]



失敗の本質-日本軍の組織論的研究」(中央文庫・762円)は古い本ですが、
今に通じることが多々書かれており、読み応えのある本でした。


本著は日本軍は人・モノ・金の戦争遂行の資源が米国より圧倒的に劣っていたが、
それを前提としても、初期の真珠湾攻撃などの勝ち戦を除くと、
ミッドウエイ海戦以後は、なぜ連戦連敗し敗戦に追い込まれた原因を社会科学的分析をしている。


この本の最後に総括として書かれていることは次のように結んでいる。


日本軍の失敗の本質とは、戦略的合理性以上に、組織内の調和と融和を重視し、
その維持に多大のエネルギーと時間とを投入せざるを得なかった。
このため組織としての自己革新能力を持つことができなかったのである。

それではどうして、組織内の調和と融和を重視せざるを得なかったのか。


それについても詳述されているが、
簡単に言え日本軍の組織学習の誤謬が指摘されている。
組織内の調和と融和の問題より、優先して学習することがあったのではないかと。


具体的に言えば、組織学習にはシングル・ループ学習(与えられた問題解決能力。成功体験の学習。)と、
ダブル・ループ学習(未来の自ら問題を設定し解決する能力)とがある。


米軍はシングル・ループ学習を踏まえダブル・ループ学習を常日ごろしていたのに対し、
日本軍はシングルループ学習で事足れりとしていた点にあると述べているが、
(換言すれば、戦略・戦術・戦法がどんどん進歩しているのに無視し、かつ自ら設定問題を解く訓練をしていなかった。)
鋭い指摘である。
その上米軍はプラスの結果もマイナスの結果も全軍で共有し組織的に活用したのに対し、日本軍は全く逆のことをしたと分析している。
これも前の指摘にも増して鋭い分析である。

(註)
・シングル・ループ学習:与えられた問題に対し最適解を出す。
・ダブル・ループ学習:シングルループ学習を踏まえ、自ら問題設定能力を有し、これに対する解を出す能力を有する。

戦争に勝利するには、基本問題に対する解を見出すだけでは、初戦は勝利しても二回目以後はは敗戦となろう。相手国軍も当然のことながらその間、何もしないのではなく命がけで学習したのであるから。

卑近な例を挙げれば、今場所稀勢の里が白鵬に勝利したのも、ダブル・ループ学習の成果であろう。



この本は、大東亜戦争という戦争中心に述べられているが、
たまたま、戦争を事例として分析しただけで、
戦争を企業経営や各種試験などに置き換えても、充分通用する話である。




⇓いま是非読みたい文庫本、これは失敗の本質 日本軍の組織論的研究⇓



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